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#07 GIG
JUGEMテーマ:ロック・ノベル
「今日、トリだってよ。オレ達」
トッツが珍しく嬉しそうな顔をして言った。
「は?何で他人のイベントでトリなん?」
ラーメンを啜るのを止めずに訊き返すとヒロが笑いながら口をはさんだ
「オレ達が先に演っちゃうとさぁ、オレ達が終わったら客いなくなっちゃうからじゃん?」
01:09 #07 GIG comments(0) trackbacks(0)
LIVE 前日
「明日、大丈夫?」
ブザーに反応して鍵を開けると、玄関に入るなりタカコが訊いてきた。
「あぁ、余裕余裕」
両手を広げておどけてみせた。
「手は?」
「マイク持つの、左手だしな」
「そっか」
鼻で笑って、唇を重ねた。
両手で押しのける力に抗って、より激しく唇を重ねる。
「ち、ちょっと…」
戸惑うタカコに構わず、背中に回した手でロンTを背後から捲り上げる。
同時に首筋に舌を這わせた。
「身体、痛くないの?」
「だから、余裕だっつの」

無言で視線を下げてパンプスを脱ぐのを急かし、手を引いて部屋に入るなりベッドに押し倒した。




    *      *      *      *


「そーいや、お前さ…」
仰向けでタオルケットに包まり半ば放心状態のタカコの横で、ベッドに腰掛けて缶ビールを飲みながら言った。
「何?」
タカコは心ここにあらずといった暢気な口調で答えた。
振り向いて視線を合わせ、鋭い視線で見つめる。
「ケンさん、来たの?」
「え?」
「お前の病院に」
「…あぁ、うん」
背を向けながら答えた。
「どーなの?あの人」
「どーなの…って?」
凍った空気が漂った。
「やっぱ、悪いんだ…」
…無言。
「かなりヤバイの?」
タカコは泳ぐ視線を隠すつもりなのかタオルケットを頭までかぶった。
無理やり剥ぎ取り、視線を合わせた。
誰がどう見ても、動揺を隠せていない。
「…お前さ、判り安過ぎ」
残っていたビールを飲み干した。
「職業上、失格じゃね? それって」
短い沈黙。
「…言わないでね、本人には」
「言えるかよ」
吐き捨てて、立ち上がった。
「どこ行くの?」
「シャワー」
振り返らずに答えて、全裸のまま風呂場へ向かった。

熱めに設定したシャワーを全開にして頭から流し、不安な気分を洗い流そうとした。
「何でだよ…」
薄々感づいては居たものの、世話になった人が病魔に襲われている現実が恨めしく、何も出来ずにいる自分が歯がゆくて仕方なかった。


――三年前の夏、当時ヒロは水商売をしている女の家に転がり込んでいた。
その頃のオレとヒロはその女の友達から売ってもらったドラッグ…エスの魔力に夢中になっていた。
堅物のトッツには勿論内緒で、二人で時には彼女とその友達の四人でキメていた。
ある夜、ヒロの部屋で四人でキメた後、抑えきれない高揚感の求めるままヒロの単車にまたがり制止する女たちを振り払いあてもなく飛ばした。
数分走った頃、小さな交差点の赤信号を無視して突っ込んだ時、右から直進してきたライトバンの横腹に衝突した。
オレの運転する単車もライトバンも大してスピードを出していなかったので大事にならずに済んだのだが、さっきまでの高揚感の反動からか絶対的な絶望感に襲われ、立ち上がるのに精一杯で話す事すらも出来ずにいた。
そのライトバンを運転していたのがケンさんだった。
険しい表情で近づいてきたケンさんは、オレの目を見るなり「お前…キメてんだろ?」と見抜き、警察には連絡せずヒロの部屋まで送ってくれた。
ケンさんはオレ達四人に、昔の友人がドラッグに溺れて死んだ話を淡々と話すと
「車の修理代は出してもらうからな」
とだけ言って帰っていった。
あの日、ケンさんと出会っていなければオレはどうなっていたか判らない――


シャワーを止めて部屋に戻ると、ベッドの上でタオルケットに包まったままのタカコが不安げな視線を向けていた。
何も言わず横に座り思い切り抱きしめ、再び押し倒した。



03:32 #06 LIVE 前日 comments(11) trackbacks(0)
新曲
「明後日のセットリストはコレでいっか」
今書いたばかりのメモを見せながらトッツが言った。
「インスト入れてぇーなぁー」
メモを見つめながらヒロが言う。
トッツが救いを求めるような視線をオレに向けた。
「しょっぱなにSE代わりでやれば? せっかく作ったんだし」
3人の視線がオレに集中した。
「そんな大物みたいな登場して良いのか?オレ」
笑いながら答えた。

「それで行くか」
トッツが言い、皆が同意した。



書き直したセットリストを皆で無言で確認していると、不意にタケが
「そーいや、さっき書いてたのって新曲の歌詞?」
と口を開いた。
「あぁ、うん」
「もう出来たの? 珍しく早くね?」
半笑いでヒロが言った。
「オレもやるときゃやるのよ。 こー見えて」
半笑いで答えた。
「ちょっと見せてくれよ」
相変わらず真面目な口調でトッツが見つめる。
ジーンズの尻ポケットから、ノートの切れ端を取り出した。

キズだらけ
  
瞬間のきらめきに憧れて 身を任せ
成るように成ればいい 踏み外しキズだらけ
  
Ah 震えが止められない もう少し見守って
泣かないで 優しさはズキズキと染みるから

さっきまではしゃいでた心さえ見えなくて
素直になんてなりたくもなくて

Ah 短い時間だけ ゆっくりと過ぎてゆく
取り消せない過ちが 心まで狂わせる

何もかもキズだらけ お前だけ抱きしめて
何もかもキズだらけ キズだらけ


死ぬのなんて怖くない そんな訳ないさ
たまらなく悔しくて 自分さえ苛めたい

Ah 壊れそうな指先で 冷たい手のひらで
このままいつまでも 夢から覚めるまで

何もかもキズだらけ お前だけ抱きしめて
何もかもキズだらけ キズだらけ
  


「ラヴソングか」
トッツが言い終わる前に
「今のお前、そのまんまじゃーん」
と、ヒロが笑いながら言った。
「良いね、コレ」
真顔でタケが言うと二人も同意した。
「これ演ろうぜー、明後日」
ヒロの提案にトッツもタケも同意した。
三人の視線がオレに向いた。
「良いよ、オレは」
「んじゃ、決まりだ」

トッツが再びセットリストを書き直し始めた。



04:16 #05 新曲 comments(0) trackbacks(0)
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